産業医のなりたち


産業医のなりたち

 英国において、かつて封建領主に仕えていた労働者は、産業革命後、契約自由の原則に基づき、個人の自由な意思で、労務を提供し金員を得るようになりました。しかし、契約自由とは名ばかりのものであり、圧倒的な力の差により、経営者は労働者に対して有利な契約を結び、労働者を搾取することはしばしばでした。

 ところが、一見有利に見えた契約が、必ずしも経営者に有利ばかりには作用しないことが分かりました。つまり、熟練労働者は、会社にとって財産であり、容易に代替可能ではない、ということが分かって来たのです。

 言い換えると、単純作業で容易に代替可能な仕事は、そもそも人件費の安価な発展途上国に事業所自体を移す方が企業に利益を生み出します。他方、人件費の高い国内での仕事は代替困難な熟練労働者が担う高度な仕事なので、熟練労働者には健康で長く働いて貰った方が企業に利益を生み出す、ということが分かったのです。

⇒誤解と不幸